①
仕入れる|売り手集客
夜10時、「売ろうかな」の瞬間に見つけてもらう
市内に住む山口さんが、クローゼットの奥のブランドバッグをふと手に取る。「使ってないな。いくらになるんだろう」。スマホで「バッグ 買取 ○○市」と検索——ミドリ堂の旅は、店に来る前のこの瞬間から始まっている。
いまのミドリ堂
- ホームページの買取相場ページは1年前に更新したきり。検索しても他社の下に埋もれる
- 受付は電話のみ・営業時間内のみ。夜10時の「売ろうかな」は朝には冷めている
- 店頭のチラシもSNSも、店長が手すきの時に作るだけ
AIが入ったミドリ堂
- 型番別の買取相場ページを、相場データと連動してAIが下書き・自動更新。検索の入口が常に新しい
- LINEで写真を送ると、AIが型番と相場を照合して概算の買取レンジを数分で自動返信。そのまま来店予約・宅配キット申込へ
- 入荷告知SNS・エリア別チラシはAIが量産し、店長は確認だけ
人がやること:概算はあくまで「幅」で出し、確定金額は店で人が提示する。この線引きが信頼を守る
使うユースケースUC-01 相場ページ ○UC-04 写真事前査定 ◎UC-05 受付自動応対 ◎UC-02 販促量産 ◎
②
仕入れる|査定・真贋
2年目の田中さんが、ひとりで査定を回せる日
翌日、山口さんがバッグを持って来店。カウンターに立つのは入社2年目の田中さん。いままでなら、型番を調べるのに20分、真贋はベテランの南さんを呼んで——南さんが休みの日は「お預かりになります」と言うしかなかった。
いまのミドリ堂
- 型番の特定に手間取り、相場を調べるのはさらに一苦労。お客を待たせる
- 真贋と高額品は南さん頼み。南さん不在の日は買取を逃し、他店に流れる
- 状態ランクの基準が人によってブレて、あとのEC販売で返品・低評価の原因になる
AIが入ったミドリ堂
- バッグを撮影すると、AIが刻印・型番を読み取り、過去に自店でいくらで買い取り・いくらで売れたかと市場相場を1画面に表示
- 真贋はAIが「真正の可能性が高い/要精査」に仕分け。要精査だけ南さんや外部鑑定に回す
- 傷・スレをAIが検出し、状態ランク案を根拠つきで提示。誰が査定しても基準が揃う
- 迷ったら、南さんの査定メモ・研修資料を学習した社内AIに質問すると根拠つきで即答
人がやること:最終判定と買取価格の決定は田中さん。AIに白黒はつけさせない。南さんは要精査対応と若手育成に回る
使うユースケースUC-06 型番読み取り ○UC-07 類似画像検索 ○UC-08 真贋補助 ○〜△UC-09 状態ランク ○UC-10 査定ナレッジ ○
③
仕入れる|契約・受入・法令
成約。書類仕事が消えて、守りは固くなる
「この金額なら」と山口さんがうなずいた。ここからが古物商の義務の時間——本人確認と古物台帳。いままでは免許証をコピーして、夕方まとめて台帳へ手で転記していた。忙しい日は、これが一番あとまわしになる仕事だった。
いまのミドリ堂
- 免許証コピー→台帳へ手書き転記。記載漏れがないか、いつも不安
- 買取価格が相場とズレていても、気づくのは月次の棚卸しのあと
- 出張買取の現場でどんな説明をしたかは、担当者しか知らない
AIが入ったミドリ堂
- 本人確認書類をAI-OCRが読み取り、オンライン本人確認(eKYC)を通して古物台帳へ自動記帳。POSと連携し二重入力なし
- 本部では買取データを常時監視。相場から大きく外れた買取はその日のうちに森本社長へ通知(誤査定も不正も早期に発見)
- 出張買取・電話の録音はAIが文字起こしし、クーリングオフ説明の漏れを自動チェック
人がやること:書類不備や疑わしい持込の受け入れ可否。アラートを「教育で直すか、調査するか」の判断
使うユースケースUC-11 台帳・本人確認 ◎UC-13 買取異常検知 ○UC-12 会話チェック △
④
商品にする|検品・登録
バックヤード——「入力する仕事」が「確認する仕事」に変わる
買い取ったバッグはバックヤードへ。ここはEC担当・村上さんの持ち場だ。色・素材・サイズ・付属品を1点ずつ入力して、1点あたり15分。ミドリ堂の出品が1日40点で頭打ちなのは、村上さんの手が2本しかないからだった。
いまのミドリ堂
- 属性の入力・採寸・付属品確認、すべて手作業。登録待ちの在庫が棚に積み上がる
- ギャランティカードの入れ忘れに、売れたあとで気づいたことがある
- 「これ、売っていい商品だっけ」(リコール・PSE)は担当者の記憶が頼り
AIが入ったミドリ堂
- 撮影台に置いて撮るだけで、AIが色・素材・年代・カテゴリのタグを下書き
- 型番ごとの付属品リストと画像を照合し、不足を自動で指摘(買取時と出品時の二重チェック)
- リコール・PSE・規制対象の疑いがある商品は登録時に自動でフラグ
- 古着は決まった置き方で撮影すれば採寸も自動(±誤差を明記して運用)
人がやること:AIの下書きの確認と例外の判断だけ。村上さんの仕事は「入力」から「検品の質を守る」に変わる
使うユースケースUC-14 自動タグ付け ○UC-16 付属品チェック ○UC-17 販売可否チェック ○UC-15 自動採寸 △
⑤
商品にする|出品
説明文の夜残業がなくなる。海外にも、勝手に売り場が増える
一点物は説明文も一点物。「角に小さなスレ、金具に薄い小傷——」。これを1点ずつ書くのが村上さんの夜の残業だった。写真は事務所の床で撮るから、どうしても生活感が出る。
いまのミドリ堂
- 説明文を書くのは閉店後。文章が得意な人と苦手な人で品質がバラバラ
- 写真の背景に段ボールが写り込む。暗い写真は売れゆきも暗い
- 海外に売れそうな商品も、英語の壁でモール出品は手つかず
AIが入ったミドリ堂
- 写真と登録データから、タイトルと状態を正直に伝える説明文をAIが下書き。「正直に、感じよく」の型で統一
- 背景はAIが自動で白抜き・統一。傷はむしろ拡大して見せるカットを自動で組む(隠さないから返品が減る)
- 海外モールへは自動翻訳+規制チェック(電池・ワシントン条約など)で出品
人がやること:「書かれた状態が実物と合っているか」の最終確認。盛る方向の修正はしない
使うユースケースUC-18 説明文生成 ◎UC-19 写真補正 ◎UC-20 海外出品 ○
⑥
売って、回す|販売・接客
3週間後、東京の久保さんと出会う
出品から3週間。東京の会社員・久保さんがミドリ堂のECで「きれいめ 通勤 バッグ 5万円以下」と打ち込む。1点物の在庫から、AIが山口さんのバッグを提案した。久保さんは質問を送る。「角のスレは、実際どのくらい目立ちますか?」
いまのミドリ堂
- キーワード検索は表記ゆれに弱く、せっかくの一点物が検索に出てこない
- ランキング表示は1点物と相性が悪く、大量の在庫がページの奥に埋もれる
- 商品への質問返信は村上さんの合間仕事。返信が翌日になり、その間に他店で買われる
AIが入ったミドリ堂
- 曖昧な言葉の検索をAIが解釈し、条件に合う一点物を対話形式で提案
- 「この商品を見た人へ」は同じ商品ではなく好みの近い別の一点物を出し続ける(売れたら消える前提の設計)
- 質問には、検品記録から返信下書きを自動生成。村上さんは確認して送るだけ。当日中に返せる
- 店頭では翻訳タブレットで訪日客にも対応(在庫検索・免税案内つき)
人がやること:値下げ交渉の最終判断と、おすすめ枠の編集方針(AI枠と目利き特集の使い分け)
使うユースケースUC-22 会話検索 ○UC-21 おすすめ表示 ○UC-24 質問返信 ◎UC-23 画像提案 ○UC-25 多言語接客 ○
⑦
売って、回す|値付け・在庫・販路
いっぽうその頃——売れ残りは、毎朝のリストで動かす
山口さんのバッグは3週間で売れた。でも倉庫には、半年動いていない商品もある。いままで値下げは店長の勘だった。「そろそろ下げるか」に根拠はなく、気づいたら季節が終わっていた。
いまのミドリ堂
- 値下げのタイミングも幅も人それぞれ。売れ残りは月末棚卸しでようやく発覚
- 郊外店で寝ている商品が、駅前店なら売れることを誰も知らない
- 業者市に出すか、フリマで粘るかは、担当者の経験頼み
AIが入ったミドリ堂
- 相場・閲覧数・滞留日数から、AIが毎朝「今日の値下げ推奨リスト」を作成。承認された分だけ各販路へ自動反映
- 店舗×カテゴリの売れゆき予測から、毎週の店舗間移動リストを提案
- 商品ごとに「店頭・EC・フリマ・業者市・海外のどこで売ると粗利が残るか」を提示。業者市の入札上限・放出タイミングも過去データから提案
人がやること:値下げ・移動・放出の承認。全自動にはしない。推奨→承認で信頼を積んでから自動範囲を広げる
使うユースケースUC-26 自動値付け △UC-27 店間移動 △UC-28 販路振り分け ○UC-29 業者市支援 ○
⑧
売って、回す|CS・アフター
「入金まだですか?」に追われない
バッグは久保さんの手元へ。その間も店には「査定はいつ終わる?」「入金はいつ?」の電話が鳴る。そしてECには時々、あのレビューが付く——「思ったより傷がありました」。
いまのミドリ堂
- 進捗確認の電話・メール対応に、店と本部の時間が細切れに奪われる
- 低評価レビューは読んで凹むだけで、原因の特定まで手が回らない
- Googleマップの口コミは返信ゼロ。買取の来店集客に静かに響いている
AIが入ったミドリ堂
- 買取・注文ステータスと連携した自動応対が一次解決。人は例外だけ引き継ぐ
- レビュー・返品理由をAIが分類し、「どの検品項目・どの説明表現が原因か」を特定→場面④の検品基準に還流
- 口コミ返信はAIが下書き。謝罪・補償に関わるものだけ人が書く
人がやること:クレーム対応と、検品基準・説明の型を直す判断。AIは「気づく」まで、直すのは人
使うユースケースUC-30 問い合わせ対応 ◎UC-31 レビュー分析 ○UC-32 口コミ返信 ◎
⑨
円環|買った人が、売りに来る
半年後——久保さんが、今度は「売る側」で戻ってくる
半年後、久保さんのスマホにミドリ堂から通知が届く。「以前ご購入いただいたシリーズ、いま相場が上がっています」。久保さんは思い出す。そういえば、使わなくなったバッグがもう1つある——。買取再販の商売では、売った人も買った人も、次の仕入れ先。この輪を意図して回すのがAIの仕事だ。
いまのミドリ堂
- 買ってくれたお客との接点は、発送完了メールで終わり
- 再来店は「たまたま」任せ。売り手リピートの仕掛けがない
AIが入ったミドリ堂
- 購入・買取履歴×相場変動から、「売り時」を個別に通知。押し付けにならない頻度で
- 山口さんにも「同じブランドの別モデルも高値です」と次の売却提案が届く
人がやること:通知の頻度とトーンの設計。「催促」に見えた瞬間に逆効果になる
使うユースケースUC-03 売り時通知 ○
月曜9時。以前の森本社長は、3店舗から届くExcelを貼り合わせて午前中を使い切っていた。いまは違う。
いまのミドリ堂
- 店舗別の買取率・成約率・在庫回転の集計に半日。「数字を見る」前に「数字を作る」で疲れる
AIが入ったミドリ堂
- 週次レポート(数字+先週からの変化点+確認したいこと)が自動で届く
- 買取価格の異常アラート(場面③)と、若手の査定学習(場面②)もここにつながる
人がやること:数字の解釈と、今週の打ち手の決定。経営判断はAIに渡さない
使うユースケースUC-33 レポート自動作成 ◎UC-13 異常検知 ○UC-10 査定ナレッジ ○
ミドリ堂は、どこから始めたか(進め方のイメージ)
STEP 1|最初の1〜2ヶ月
◎の3つで体感する
説明文の下書き(UC-18)、口コミ返信(UC-32)、週次レポート(UC-33)。既製サービスの組み合わせで始められ、数週間で「AIと働く感覚」が社内に生まれる
STEP 2|3〜6ヶ月
査定と受付を仕組みに
写真事前査定(UC-04)、型番読み取り+過去実績の照合(UC-06・07)、台帳の自動化(UC-11)。ここからが買取再販の独自領域=同業との差になる
STEP 3|半年〜
判断の回転数を上げる
値下げ推奨リスト(UC-26)、真贋の仕分け(UC-08)、販路振り分け(UC-28)。「AIが推奨→人が承認→反映は自動」の型で、判断の質を落とさず回転数を上げる
順番は会社の詰まりどころ次第です。実際には「どの場面がいちばん苦しいか」から逆算して組みます。大事なのはAIを1つ足すことではなく、①〜⑨の流れのどこに入れて、次はどこへつなげるかを描いておくこと。
付録:33のAIユースケース一覧
◎=既製サービスですぐ(数週間〜)/○=既製AI+軽い開発(1〜3ヶ月)/△=データ整備・業務の組み直しが必要(3ヶ月〜)。各ユースケースの詳細(課題・AIに任せる範囲・人が判断すること・公開事例)は別紙の辞書版にあります。